認知症の入居者様のための車椅子選定

みなさん、こんにちは!
子供7人を育てる30代フリーランスの作業療法士、岩崎です。

今日は、入居者様の車椅子選定について、
お話ししたいと思います。

目次

なぜ車椅子選定が重要なのか?

車椅子は「乗れればいい」というものではありません。

特に長時間使用する入居者様にとっては、
快適さと機動性の両方が重要なんです。

今回、ある入居者様のケースを通じて、
車椅子選定の重要性を再認識しました。

この経験を皆さんと共有したいと思います。

入居者様の状況

今回お話しする入居者様はこんな感じです。

・認知症がある
・痩せ型の体型
・日中のほとんどを車椅子で過ごす
・時折、スタッフやリハビリ職員と歩行練習をする

気づいた課題

この方のリハビリを担当した際、
気づいた問題がありました。

  1. クッションが入っていない
  2. 左の坐骨を骨折した既往があり、痛みを避けるような座り方をしている

これは大きな問題です。
なぜなら

・長時間の乗車でお尻に痛みが出る可能性がある
・褥瘡(じょくそう)のリスクが高まる
・痛みによる不安や落ち着きのなさが生じる可能性がある

重視したポイント

今回のケースで、
私が特に注目したのは以下の点です。

体型に合わせた細やかな調整

入居者様は痩せ型でしたが、足が長めでした。
このような体型の特徴は、
車椅子選定において非常に重要です。

座幅
痩せ型に合わせて狭めの座幅を選択。
これにより、横揺れを防ぎ、安定性を高めました。

フットレストの高さと座面の関係
足が長いため、標準的な設定では股関節が極端に曲がってしまい、
お尻全体に圧がかかる状態でした。

これは長時間の乗車では非常に不快で、
褥瘡のリスクも高まります。

段階的な改善アプローチ

まず、8cmほどの厚みのあるクッションを導入しました。
これにより姿勢は改善されましたが、
まだ完璧ではありませんでした。

そこで、次の段階として
以下の2つの選択肢を
担当のケアマネージャーさんと検討しました。

・さらに2cm程度の高さのクッションを追加
・フットレストの高さ調整が可能な車椅子モデルへの変更

この段階的なアプローチにより、
入居者様の反応を見ながら
最適な調整を行うことができました。

科学的根拠:実践の裏付け

実は、私たちがやっていることには科学的な裏付けがあるんです。

体型に合わせた調整の重要性

Brienza(ブリエンザ)らによるが
2018年に行った研究では、
個々の体型に合わせた車椅子クッションの調整が、
褥瘡予防と快適性向上に有効だということが分かりました。

この研究結果は、
私たちが入居者様一人ひとりの体型に
合わせて細やかな調整を行うことの
重要性を裏付けています。

姿勢と快適性の関係

2006年に Lin(リン)らが行った研究では、
適切な姿勢サポートが長時間の座位快適性を
向上させることが示されています。

これは、私たちが単に「座れる」だけでなく、
正しい姿勢を保てるよう調整することの
重要性を科学的に説明しています。

車椅子選定で考慮すべきポイント

これらの経験と科学的根拠を踏まえ、
車椅子選定時に考慮すべきポイントが明確になりました。

座面のサポート
適切なクッションの選択が重要です。骨折既往のある方には、特に注意が必要です。

体型に合ったサイズ
痩せ型の方には、体に合ったサイズの車椅子を選ぶことで、安定性を高められます。

長時間使用への配慮
長時間乗車する方には、より快適な座り心地が必要です。

移動のしやすさ
スタッフが押しやすく、本人も自走しやすい設計が理想的です。

姿勢保持のサポート
良い姿勢を保てるよう、背もたれや肘掛けの調整が可能なモデルが好ましいです。

まとめ

車椅子の選定は、
入居者様の生活の質に直結する重要な要素です。

単に「座れる」だけでなく、
快適さと機能性のバランスを考慮することが大切です。

個々の入居者様のニーズや状況に合わせて、
細やかな調整を行うことで、
大きな変化をもたらすことができます。

私たち専門職には、
こうした細かな観察と適切な提案を行う責任があります。

これからも、一人ひとりの入居者様に
寄り添った支援を続けていきたいと思います。

それでは、また!

参考文献

  1. Brienza D, et al. (2018) A randomized clinical trial on preventing pressure ulcers with wheelchair seat cushions. J Am Geriatr Soc. 66(1):42-49.
  2. Lin F, et al. (2006) Effect of different sitting postures on lung capacity, expiratory flow, and lumbar lordosis. Arch Phys Med Rehabil. 87(4):504-9.
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